※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
逃避行と、半分こ
「それじゃ、今日の授業はここまで。今日やった範囲はよく復習しておくように」
6時間目の古文の先生が、剣呑な口調でそう言って教室を出て行く。
この先生が授業の始まりと終わりで号令をかけないことは分かっていたから、6時間目終了――つまり放課後に切り替わった瞬間、あらかじめスタンバイしていたすべての荷物を持って、みんなの注目を浴びないうちに教室を駆け出た。
グレーが滲んだ寒空の下の校門前。
放課後になったばかりでまだひとけがないその場所に、いつ教室を抜け出したのかその姿はあった。
今回は、私の方が先だと思っていたのに。
吐き出した白い靄の行く先を見つめていたというのに、私が近づけばいつだって真っ先に私をその瞳に捉えるその姿の正体は、言わずもがなユキだ。
私を見つけた途端、まるで花が綻ぶみたいに頬を緩める。
「はのんちゃん、おつかれ」
「おまたせ。ずいぶん早かったのね」