※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


「え?」

「なんのしがらみもない世界で、はのんちゃんとゆっくり生きていきたい」


ユキがどんな顔でそう言ったのか、この体勢じゃ窺い知ることはできない。

肩にもたれかかり少し顔を伏せがちにしているから、私たちが反射した車窓でも確認できない。


けれど、まるでユキひとりを置き去りにしてしまうような気がした。


だから私はもたれかかれている側と反対の手をそっと伸ばし――あやすみたいにユキの頭をぽんぽんとそっと撫でた。


「……っ」


ユキが小さく驚いたような気配があった。


なんだか無性に優しくしてあげたいような甘やかしてやりたいたいような妙な衝動にかられ、優しく、でもたしかな感触で頭を撫でてやる。


すると、もたれかかってくる頭の重みがわずかに増した。

それは、いつもぴんと背筋を伸ばしているユキが、ようやくだれかに身も心ももたれかかることのできた瞬間のようで。

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