※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
偶然にも、次の駅は終点だった。
どちらにしても乗り換えなければならなかったからタイミングもよく、その駅から出て、私たちは少し早めの夜ご飯も兼ねて食料を捜しに街へ繰り出した。
電車賃のことやらを考えると、持ち合わせは決して潤沢とは言えず贅沢はできないから、お手頃で腹の足しになるようなものが目当てだ。
郊外を抜けてだいぶ離れてから現れたその街は、来たことなんてないはずなのにどことなく懐かしさを感じる下町だった。
小さなお店が軒を連ねて建ち並ぶ商店街を、ユキと並んで歩く。
少しさびれて人の姿がないその景色に、制服を来た私たちはあまり馴染み込めていない。
曇ったガラス戸に映った自分たちの姿を見て、私服も持ってくるべきだったと今更少し後悔した。
時間が、いつもの平日よりもゆったり流れているように感じる。