※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
「なに食べよっか。温かいものがいいけど……」
スマホで街の情報を調べながら歩いていると、突然後ろから制服のブレザーの裾を掴まれ、私は足を止めた。
「はのんちゃん」
「ん?」
「俺、あれ気になるかも」
振り返れば、ユキがさっき通り過ぎたところにあった店を指さしていた。
その店の前には、「鯛焼き」と書かれた、ところどころほつれたのぼりが立っている。
「え? 鯛焼き?」
せっかくなのにそんなものでいいのかと思ったけど、鯛焼きという存在に初めて遭遇したらしくあまりにキラキラとした眼差しで店先に並ぶ鯛焼きを見つめているユキを見たら、他のものを提案することも躊躇われて。
「そうしよっか」
私は苦笑しつつ、鯛焼き屋の前へと戻った。