※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
鯛焼きを食べ終えた私は、ジャケットのポケットからあるものを取り出した。
「さっきね、ちょっと面白いもの買ってみたの」
それは、さっき立ち寄った街の駄菓子屋で買った飴だった。
昔よく食べていた懐かしさと、ちょっとした遊び心で、いつかユキと食べようと買っておいたのだ。
「なに? それ」
「ふたつ入りの飴なんだけど、ひとつが普通の甘い飴で、もうひとつが酸っぱい飴なのね。運試ししてみない?」
「いいね、楽しそう」
ビニールを開けると、黄色の飴がふたつ並んでいた。
もちろん、見ただけではどちらが当たりの飴かは分からない。
二者択一。
「はのんちゃんから選んでいいよ」と先攻を託された私は数秒悩んだうち、左側の飴を選んだ。
ユキがもうひとつを手に取ると、「せーの」で飴を口に入れ──結果はすぐに出た。
「すっぱーーー!」
声をあげたのは私だった。
子ども向けの飴のくせに、まるでレモン3個分くらいが凝縮されているのではないかと思うほどの容赦ない酸っぱさだ。
足をジタバタさせて酸っぱさに悶えていると、このつらさを知らないユキはおかしそうにくすくすと笑っている。
「な、なに笑ってんのよ!」
「可哀想なのになんだか可愛くて」
そして「俺のは甘かった」と飴玉を唇に挟んで見せた。