※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
──それが、悪戯心だったのか、しっぺ返しだったのか、自分でも分からない。
けれど私は体をユキの方を向けると、唇に挟まれていたユキの飴玉を唇で奪っていた。
キスとはカウントできないほど、小鳥がついばむようにわずかに触れ合った唇と唇。
酸っぱさしかなかった口内に、とろけるほどの甘さが広がっていき、酸っぱさが中和されていく。
「甘いのもーらい」
そう言ってしてやったり顔で笑い、口の中でふたつの飴玉を転がしていた時だった。
「──はのんちゃん」
名前を呼ばれたのと、右手首を掴まれたのは多分同時だった。
ドサッと音がして、私は彼にベンチに押し倒されていたことを悟る。