※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。




電車を降りると、冷たい外気が私たちを歓迎した。


目的地は、駅を出て間もなくのところにある。


「ちょっと歩くけどいい?」

「もちろん。はのんちゃんと一緒なら、どこにでも行くよ」

「ありがと」


駅の裏にまわり、光を背にして進む。


大通りから外れて、山と田んぼの間の道を歩いて行く。

駅から離れるにつれて、肺の中に入ってくる空気が澄んでいくように感じる。


少し不安定な足場を記憶を頼りに進み、それから大きなカーブを超えたところで突然視界が開けた。


「着いたよ」

「ここ……」

「ひまわり畑」


私たちが立つ砂利道よりもひと段差分下に広がる広大な敷地に、まばらながらも何輪ものひまわりが咲いていた。


夏と先月に写真を録りにきた時よりも、ひまわりの花びらはしなびて、内側に萎縮している。

けれど、しっかりと土の上に自らの力で立っている。

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