※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


それからユキは、私に向かって申し訳なさそうに眉尻を下げて苦笑した。

さっきまでの重い空気などすべて冗談でだというように。


「なんかごめん。ちょっと感傷的になっちゃったな」


ユキはいつだって私のことをなにより優先する。

自分が一番苦しいはずなのに、私の心配を取り払おうとするのだ。


私はそんなユキを見るとどうしてだかいつも息苦しくなる。


だから私は、黙ってひまわり畑を見つめたまま、隣にいるユキの手をきゅっと握りしめた。


ユキが驚いたのが、繋いだ手越しに伝わってきた。


ユキの手は温かい。

まるで人間のそれのように。


凍えるような北風は、私たちを包む空気に割って入ってこようとはしない。


「あんたはひとりなんかじゃないんだからね」


なにを伝えるべきかわからなくて、咄嗟に口からこぼれた言葉に思いをすべてのせる。


なんでもっと優しい言い方ができないのだろうと悔やんでいると、不意にきゅっと手を握り返された。

その仕草からはまるで、いつも私を導いてくれるユキが、初めて私を求め縋っているように感じられた。


今までのどんな時よりもユキを近く感じるのは、なんでなのだろうか。


すると、隣でユキがじんわりと噛みしめるように呟いた。


「俺はきっともう、君がいない世界なんて息もできないよ」





< 136 / 185 >

この作品をシェア

pagetop