※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
その時、私はあることを思いつき、「ちょっとあっち向いてて」と指示を出す。
突然の指示に「うん?」と不思議そうにしながらも、ユキは私に背を向け海の方を見る。
その間に私は背負っていたリュックを砂浜に置き、そこから一眼レフのカメラを取り出した。
そしてカメラをユキの方に向けて構える。
海とユキの後ろ姿の組み合わせはやはり、思い描いていたとおり綺麗で画になる。
そういえば最近はるくんからお願いをされなくなって写真を撮る機会がなかったから、こうしてカメラを構えるのは久々だった。
けれどどうしても写真に収めたいという衝動に駆られたのだ。
ユキに写真を撮ったことがバレないようカメラをリュックの中に戻す。
こんなにも現像を待ち遠しく感じるのは、初めてだった。