※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


海に面した空が、もうすぐ夕暮れを迎えるためにオレンジ色をわずかに滲ませ始めた頃、私たちは砂浜に並んで座った。


冬の海は、夏に見るよりも色が深くて海の底が遥か遠くに感じられる。


海の色は黒でも紺でもない。

たくさんの色が交じり合っている複雑で綺麗な色だ。

きっと絵の具では作れないだろうなと、そんなことを頭の片隅で思う。


どうしてだかユキの隣で見る海は、とても美しい。

ユキといるとこの世界が綺麗に見える。


「帰りたくないな……」


砂浜に座り、海を見つめたままぽつりと呟けば、隣に腰を下ろしたユキが「え?」と私を見つめてきた。


「学校なんか行かないで、ずっとここにいたい。あんたと一緒に」


学校とは切り離された世界。

ここにいれば、こんなにも楽に呼吸ができる。

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