※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
「こんな私、自分が一番嫌い……。弱虫で見栄っ張りな自分が大嫌い……」
ああ、声が震えてしまう。
今背中を押されたらきっと、涙がこぼれて止まらなくなる。
広い海を見ると自分がちっぽけに感じるなんてよく言うけど、あんなのきっと嘘。
だって、どんなに大きな海を前にしたところで、私にとって私の問題の大きさは変わらない。
自分自身でどうにかするまで、どこまでものしかかってくる。
涙のせいか潮風のせいか濡れた自分の声は、まるで縋るような響きにも聞こえた。
「……家がケーキ屋を営んでるから、舞香にいいカモにされてることだって、本当は分かってる。でも、そんなの家族には言えない。かっこつけて友達いっぱいいるんだって話してるから、ケーキを頼むとすごく嬉しそうに用意してくれるの。……本当のこと言ったら、お父さんとお母さんに失望されちゃうかもしれない……」