※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
心の奥深くに閉じ込めていた一番脆い本音がこぼれて、ぐわっと襲いくる涙の予感に抗えなくなり、私は思わず両手で顔を覆った。
「……時々、消えてなくなりたくなる……」
何度も脳裏に浮かんでは言語化できずに、それでも心に蓄積していた思いが波間にこぼれ落ちた。
すると、その時。不意に頭の裏に手が回され、強く引き寄せられた。
ふわりと甘い香りが鼻に触れて、抱きしめられていることにようやく気づく。
「こうされると、人ってストレスが減るんだって」
耳元で聞こえてきたのは、昇りたての朝陽よりも柔らかい声。
「……な、」
「毎日、はのんちゃんは闘ってるんだね。よく頑張ったね」
そっと紡がれたユキの一言一言に、どうしようもなく涙腺が刺激されてうっかり泣きそうになる。
その存在に縋るみたいに、ユキの背中にそっと手をまわす。
凍えるような潮風は、私たちを包む空気に割って入ってこようとはしない。