※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


「でも結局根負けして、エンプロイドに改造する手術をした。だけど、エンプロイド用の心臓が完成するまでユキの体は保ちそうになくて、心臓は人間の時のものを代用することになってしまった。けれどそれが、エンプロイドの体とうまく噛み合わず……。人間の心を持った不完全なエンプロイドになってしまった。いつ止まるか分からないんだ、この壊れかけの心臓は」


少しずつ、香山先生によって明かされた事実が頭に染み込んでいく。


私は涙でぼやけて焦点が定まらない瞳で、薄い瞼を閉じたままのユキを見た。


「そこまでして、どうしてユキはエンプロイドに……」

「それは」


すると、その時。私の声に答えるように長い睫毛が静かに揺れ、瞼の下から色素の薄い瞳が現れた。


「ユキっ……」


おぼろげな瞳に私を映し、目を覚ましたユキは儚く嬉しそうに微笑んだ。


「……名前、呼んでくれた」

「え……?」


そういえば、まわりに聞かれることを気にして、今まで呼んだことはなかったかもしれない。


どうして私は、エンプロイドという体裁ばかりを気にして、ユキの本質を見ようとしなかったのだろう。

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