※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
すると香山先生が割って入るように、ユキに声をかける。
その声音からは、いつも冷静な香山先生からはかけ離れた焦りの色が見えた。
「ユキ、今エンプロイドのドクターを呼んでいるからな。もう少しの我慢だ」
「柾くん……」
ユキの容体は一向に回復の兆しを見せない。
できる限り苦しい表情はしないようにしているようだけれど、呼吸の音が今にも途切れてしまいそうなほど微かだ。
私はただただ、空気に溶けてしまいそうな白くて薄っぺらな手を、この世界に引き留めるように握りしめることしかできなかった。
「ユキ、ごめん。私ずっと傍観者で、やってたことは大瀧と同じ。あんたのこと傷つけてばっかりだったね。ごめん、ごめんね、ユキ……」
謝って許されるようなことではないけれど、償いの言葉がこぼれる。
けれどユキは私に、自分を否定するような言葉を決して言わせてくれない。
「でも助けてくれた。さっきのはのんちゃん、すごくかっこよかった」
ユキはきっと私を気遣ってくれているのだろうけど、その優しさはぽろぽろと涙腺を刺激する。
こぼれ落ちた涙はユキの頬に落ちて、まるでユキが泣いているように見えた。
「ごめん。泣かせたいわけじゃないんだ。どうしたら笑ってくれる?」
私が握りしめるのと逆の手で、そうっと微笑みながら私の頬を伝う涙を拭うユキ。
その手にはほとんど力がこもっていない。