※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
吐き出す息はひゅうひゅうと絡まり、とても苦しそうだ。
その肩を何度もさすり、落ち着かせる。
「もういいよ、ユキ。苦しくなるからしゃべらないで」
だけどユキは口を噤もうとはしなかった。
なにかを悟ったように息を吐き出し、柔らかく、でもたしかな声で囁く。
「はのんちゃん、俺の心臓や体のこと、柾くん──香山先生から聞いたんだね」
私は声にもならず涙を流しながらうんうんと頷いて見せる。
「俺はね、もし違う人生を選べたとしても、はのんちゃんに出会うことができたこの人生を選ぶんだと思う」
ぽつりぽつりとまるでこの白い空間に色をつけて行くみたいに、声を落としていく。
天井を見上げて一筋の涙を流す横顔を、この世のどんなものより美しいと思った。
その綺麗な顔に微笑みをのせて、ユキがこちらを見る。
「全部全部、はのんちゃんのおかげ。君が俺の人生を幸せに満たしてくれた。ありがとう」
そして。「大好きだよ、はのんちゃん」と、もう何度もくれた愛の言葉を新鮮な響きでくれるユキ。
――こんなの、やっぱり反則だ。
ぽろぽろっとこぼれ落ちる涙と共に、
「私も……。私もユキのことが好き」
自分の気持ちが、ついに口からこぼれ出た。
「え……?」
「人間もエンプロイドも関係ない。好き。だれより……愛してるんだと思う」
鼻をすすり、腕で涙をぬぐいながら溢れる想いを口にする。