※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。





その日、私は午後の授業を早退することになった。


ユキはあの後エンプロイドの研究員に診てもらうことになり、ついていたいと懇願したけれど、私自身の心を休めた方がいいと言って香山先生に帰ることを促された。

だからその後のことは分からないままだ。


学校を出て、それからどうやって駅まで歩いてきたのかよく覚えていない。


12月の昼間の駅は、ひとけがなくあまりに静かだ。


次の電車が来るまで20分。

電車が来るまで、椅子に座って待つことにした。


冷たい風と、たまに来る反対車線の電車が、私の髪を揺らしていく。


私はポケットから、デートの時に撮った写真を出した。

海を背に立つユキの写真を。


それでもやっぱりなにも考えられなくて、私は痛くて耐えられない隙間を埋めるようにスマホを取り出した。


そして指は自然と、ユキと――はるくんと繋がっていたチャットを開いていた。


するとすぐに、はるくんからメッセージが届いていることに気づいた。

しかも送信日は今朝。


私は寒さでかじかみ震える指でチャットを開いた。


『ひまわりさん、今日は本当のことをすべて君に伝えたくて、メッセージを送りました。
方法はいろいろ考えたけれど、やっぱり俺たちの始まりのここで、すべて伝えるよ。
長くなるけど聞いてください、はのんちゃん。』


「え……?」


あまりに自然に並べられた自分の名前に、混乱で目を見張る。


まさか〝ひまわり〟の正体が私だと知っていたなんて。

知っていたうえで、裏切り続けた私に笑いかけてくれていたというのか。

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