※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


『最後に俺が撮った写真を贈ります。
俺が綺麗だと思ったものはすべて君でした。』


そこに添付されていたのは、すべて私の写真だった。

鯛焼きを頬張る私、電車の中で眠りこける私、授業中ちょっと退屈そうにしている私。


目の前に停まった電車のドアがプシューッと開き、私はスマホに視線を落としたまま足を踏み入れた。


メッセージの最後には、もう一枚写真が添付されていた。

それは、私の後ろ姿の写真。


『君の背中には、大きな翼が見えるんだ。
はのんちゃん。君ならどこにだって飛べるよ。』


――もう、限界だった。

電車に乗り込み背後でドアが閉まった途端、我慢の糸がついにぷつりと切れて涙腺と感情の器は壊れ、膝から崩れ落ちて嗚咽した。


「ユキ……、ふ、う……ゆき……っ、う……う」


まわりの視線も気にせず、声を押し殺しながら大粒の涙を流し続けた。

 
私だって、本当は多分、正体を知ってからもずっと好きだった。

だけど、自分が傷つくことばかり恐れて、その気持ちを受け入れる勇気がなかった。


弱くてごめん。いっぱい傷つけてごめん。

こんな私でも、あんたみたいに強くなれるかな──。


私が持っていたユキの後ろ姿の写真と、スマホの私の後ろ姿の写真が並んで、それはまるで海を背に手を繋いでいる一枚の写真のように見えた。





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