※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
踏み出す一歩と、背中を押した君
背伸びをしていた髪を暗くした。
濃いメイクも止めた。
月曜の朝、学校へ行く前に自室の前身鏡の前に立つと、今までとはまったく違う自分が写っていた。
まだ少し見慣れないけれど、これが私だと妙に落ち着く心地でもある。
もうまわりの目ばかり気にして自分を殺すことをやめると決めたのだ。
自室を出て「行ってきます!」とリビングに声をかけると、「いってらっしゃーい!」とお母さんの元気な声が返ってくる。
その声に背中を押されて、私は家を飛び出た。
視界がクリアになり、肩がとても軽い。
生まれ変わったかのような心持ちで通学路を歩き、やがて学校に着く。
廊下でたむろしている生徒に、校則違反している生徒を注意する先生。
学校の中は、私のことなど気にも留めず、いつもの日常の時間が流れている。
私にしては人生を変えるほどの出来事も、きっと他の誰かからしてみたら、たった一言で終わるだけの話。
そうきっと、それだけなのだ。