※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
*
そして11月頭のある日のこと。
月一の検査を前に、主治医が病室を訪れた。
『検査の後、話がある』
そう告げる表情は目に光がなく、余計な感情を消そうとしているのかひどく事務的だった。
まるで主治医の方が病人のようだと頭のどこかでぼんやり思いながら、それと同時に自分が告げられるであろう言葉を悟った。
嫌な予感ほど、そういう予想は鮮明にできてしまう。
主治医が去り白い檻と姿を変えた空間の中で、俺は今にも追い出されそうなこの世界にしがみつくようにスマホを手に取り、チャットを開いた。
たったひとりの好きな子を助けることはできない。
体はしんどいばかり。
なにもできずにただ終わりを待つばかりなのに、
『なんで俺は生きているんだろう』
そんな弱音を無意識のうちに打ち込み送信してしまったところで、先にきていたひまわりさんのメッセージに気づいた。
『今日はいつものメンバーでカラオケオール! たっぷり歌ってくるね』
慌てて、弱音を吐き出したメッセージを取り消す。
どうして忘れていたのだろう。
ひまわりさんと俺は、そもそも生きている世界が違う。
こんな重いメッセージを送ったところで変な気を遣わせてしまうだけだ。
……そういえば俺は、ひとりだった。
改めて突きつけられたひんやりとした実感に、俺は力なくスマホを握りしめた。