※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
エンプロイドと、私
その日の放課後。
「はのんちゃん、帰ろう」
あろうことか、グループのみんなと別れ校舎を出た私を、ユキは校門の前で待っていた。
笑顔と共に吐きだした息は白く、すらっと伸びた形のいい鼻はすっかり赤く染まっている。
いったいどれほど待っていたのだろう。
一瞬そんなことが頭を過ぎったけれど、そんな気を遣えるほど余裕があるはずもなく、ユキを見つけた体勢のまま突っ立って呆然とした。
まわりにみんながいないからいいものの、話しかけてくるなんて。
告白はもちろん断った。
『なに? はのん、もしかしてそのエンプロイドと知り合いだった?』
ユキの告白を聞き逃してくれるはずもなく、舞香がわざとらしく口元に手を当て、私を見上げてくる。
机に座っているはずなのに、彼女はなぜか立っている私よりもすごく大きな存在に思えて。
まわりからの視線を一身に浴びる中、私は震える唇を開いた。
『……ひ、人違いじゃない?』
信じてもらえたのかわからないものの、あの時はそうしてなんとかやり過ごした。
けれど、こいつのせいで私の高校生活が崩壊したらどうしてくれるっていうのだ。
「……は?」
目も合わせないままぶつけた声は、自分でも分かるほど苛立ちの色に染まっていた。
その苛立ちが伝わっているのか伝わっていないのか、ユキは眉尻を下げて微笑む。
「暗くて危ないから、家まで送るよ」