※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


「手、寒そうだから」


そう言って手袋を差し出してくるユキの白い手は裸になって、冷たい風にさらされている。


「は?」

「使って?」

「でも、そしたらあんたが……」

「俺は大丈夫」


すごく柔らかい笑顔なのに、多分ユキは一度言ったら譲らない。


ぶらんとさせたままの私の手をとり、もう一方の手で私に手袋を握らせた。


「じゃあね、はのんちゃん。また学校で」


ユキが改札に向かって、ひとり歩いて行く。


ちょっと声を張るだけで、きっとユキは私の声を拾って振り返る。

だけど私は話しているところをだれかに見られていたらと思ったら怖くて、力なく手袋を握りしめたまま引き留めることはできなかった。


寒空の下、いつ来るかも分からない私を待っていた体はきっと冷え切っているだろうに、どうして私のことばかり一番に考えるのだろう。


……ああ、痛い。

ユキの優しさがささくれだらけの心にしみて、すごく痛い。





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