※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。






舞香は目を引く。

派手な顔立ちはもちろん、簡単には近づけないカリスマのようなオーラを纏っているせいだろう。


昼休みということで大勢の生徒がひしめき合う廊下の中でも、行き交う生徒の視線はまるで引き寄せられるように舞香に向く。


こうして隣を歩いているだけで、なんだか私までまわりから認められた気になる。


けれどその実、ふたりで廊下を歩きながら、私の体は異様な緊張に包まれていた。


普段はグループでいるから、舞香とふたりきりになったことはほとんどと言っていいほどない。


話が途切れたら重い空気になってしまうのではないか、この話つまらないと思われたらどうしよう。

そんな不安にかられ、頭をフルに回転させて間を作るまいと必死に饒舌に語り続ける。


必死ににこにこ話しながら、不意に頭の隅のやけに冷静な部分が自分に問うてきた。

舞香と並ぶ私は、傍からはどう見えているだろうと。

本当に認められているのかと。


釣り合う仲の良さそうな友達だろうか。

あるいは、自分よりも小柄な主人のご機嫌取りに必死になっている子分だろうか。

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