※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
まわりで楽しそうに繰り広げられる会話を笑顔で聞きながら、私は心臓を嫌なふうに鳴らしていた。
だって、みんなでパンケーキを食べに行ったなんて、聞いていない。
先月あたりにみんなでプリクラを撮りに行こうという話になった時、ケーキ屋の手伝いをする予定が入っていて、誘いを断ったことがあった。
そのことがあったから家の事情を慮って、誘ってこなかったのかもしれない。
だけどこれでは、配慮してくれたのか故意に省かれたのか、曖昧すぎる。
そして次の予定に私はカウントされているのだろうか。
あれ……どんな顔してここにいればいいんだろう……。
「私も行きたい」と、一言言えばいいのかもしれない。
けれど、もしも歓迎されなかったら、私の一言がこの場を気まずくさせてしまったら、そう思うと口を開く勇気は出なくて、ひたすら存在感を消すことばかりを考える。
この小さすぎる世界の中で、どう息を吸えばいいのだろう。
重なり合う幾多の影に、自分の影だけがうまく溶け込めていない気がする。
先ほどまで体の芯からじわじわ浸食してきていた熱が、今はもうすっかりその影を潜めていた。
それとは対照的に、さっきまで余裕があった自分の息遣いが、肺が縮こまってしまったかのように苦しくなった。
太陽にはすっぽりと雲が覆い被さり、地上へ降り注ぐ日差しを邪魔している。