※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


突然立ち止まった私に気づき、みんながこちらを振り返ってくる。


「はのん? どした?」


本当のことなんて言ったら、みんなの輪を乱してしまう。


けれど、体はいうことをきいてくれない。

耳の奥で疼くじんじんとした症状が、徐々に視界を覆ってくる。


……なにか、なにか言わなきゃ……。


「……っ、ごめん、目薬教室に置いてきちゃったから急いで取りに行ってくる」


咄嗟に思いついた言い訳はもちろん、怪訝そうな表情たちに不審がられる。

もっといい言い訳があっただろうけれど、動転した頭でようやく思いついたのはこれだった。


「え、今から戻るの?」

「我慢できないくらい目薬必要なの?」


ここまで走ってきたのになに言ってるんだと呆れた声が飛んでくるけれど、ひとつにでも答えたら墓穴を掘ってしまいそうで、加えて適確な応答ができるであろう心の余裕もなくて、私は強引に話を切り上げる。


「みんなは先行ってて。ちょっと行ってくる」


そう告げるなり、私は踵を返してその場を離れた。


逃げたい一心で足を動かすけれど、心との乖離は大きく、よたよたと体を引きずることしかできない。

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