※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


きっかけは、クラスの一部で横行していたカンニングだった。


内容は、先に授業でテストを受けていたクラスから問題用紙を受け取り、それをメッセージ等で広めていくというもの。


そんなカンニングが横行していると気づいた時、私は驚いたし、よくないことだと思った。


だから、担任の先生に相談したのだ。

こういうようなカンニングがおこなわれているのだが、どうしたらいいかと。


私はてっきり、担任がこれ以上カンニングが起きないよう、他のクラスと同じテストを使わないようにしたり問題用紙を回収したりして、こっそり解決してくれるものだと思っていた。


けれど、担任はこの話題を、HRの時間に持ち出してきたのだ。

そしてクラスのみんなの前で、こんこんと説教を始めた。


――カンニングが横行しているらしいが、こんなようじゃ卑怯な大人になるだけだ。勇気を持って先生に教えてくれた花宮を見習え――


信じていたはずの大人にあっさり手を離され、まるで足下から奈落の底に落ちていくようなこの時の感覚は、多分一生忘れられない。


クラスメイトからの批難の視線が私に向かないわけがなかった。

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