※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。





『討論テーマ:地球温暖化。2~5人で1グループを作って、議長、書記、タイムキーパーを決めておいてください』


昼休み。

教室に入ってきた担任が黒板に白いチョークででかでかと書いていった文字に、お弁当を食べていた舞香がわざとらしくため息をついた。


「こういうの、ほんとだるい」


彼女の一声を発端に、グループのあちこちから賛同の声が上がりはじめる。


「だるいよねー」

「議論って中学生かよ」


その流れに遅れないようタイミングを見計らって、かつみんなに共感してもらえそうなことを振り絞り、口を挟む。


「うちの担任、なんか常に張り切ってる感じでついていけないよね」

「わかるわかる。そんなに張り切らんでもって感じ。痛々しいわ~」

「ま、うちら5人だからちょうどよかったけど」


お弁当箱の中のミートソーススパゲティーをフォークに絡ませながら面倒そうに呟かれた舞香の一言に、ほっとする。

グループの中に、ちゃんと自分がカウントされていることを確認できた。


○人でひとグループを作るというのは、なんとなくいつも怖くて落ち着かなくなる。

みんなとの間には見えない壁があって、自分ひとりがその輪の中から外されてしまうのではないかと常に不安だから。

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