※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
お弁当を食べ終え、机を合わせた形のままみんなでだらだらしゃべっていると、授業開始のチャイムが鳴った頃、担任と多くの画材を持ったユキが教室に入ってきた。
どうやら授業で使う荷物運びのために、日直のユキが手伝わされたらしい。
……そういえば、ユキはいつもお昼になると、教室からふらっと姿を消す。
いつもどこでお昼を食べているのだろう。
そんなことがふと頭を過ぎった時、教卓に立って教室をぐるりと見回した担任が口を開いた。
「お、もうグループできてるんだね。感心感心。ところでユキくんはどこのグループですか?」
一切空気を読まない一言に、担任が入ってきたのも構わず雑音にまみれていた教室が、水を打ったようにしんと静まりかえった。
もちろん、どこかから声が上がることはない。
すると、静寂の理由を悟ったのか、あるいは最初から分かっていたのか、担任が怒ったように声を静めた。
その口調はまるで小学生──いや、読み書きすらままならない子どもたちにでも言い聞かせるようで。
「みんな、言ったよね? エンプロイドだからという理由で区別するのはやめましょうって。このままじゃユキくん、ひとりで発表することになっちゃうよ? それじゃあ、カワイソウでしょう?」
〝カワイソウ〟。
正義を振りかざして本心の下に一番差別の意識を持つ担任の言葉に、ぞわりと嫌悪感が肌を走った。
これじゃまるで公開処刑だ。
教卓に立つ担任の姿が、似ても似つかぬはずなのに中3の時の担任の姿と重なる。