※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
「冷えちゃうから、戻ろう。はのんちゃん」
ユキに優しくされるたび、つらい。
だって私は裏切ってばかりなのに。
いっそ、嫌われてしまった方がよっぽど楽だ。
「大村さんの方があんたにお似合いよ。私より可愛くて優しい子なんてたくさんいる。こんな私のことなんて嫌いだって言ってよ。最低だって言って……」
ひとつ声がこぼれたら、それがきっかけとなって、感情を乗せたへにょへにょな声があふれるのが止まらなくなる。
すると私の声をぴしゃりと遮るように、聞いたことがないくらい強い調子でユキが「はのんちゃん」と私の名前を呼んだ。
……ああ。顔なんてあげなきゃいけなかった。
そんな真剣な顔で見つめられたら、嫌われようとした覚悟が揺らいでしまう。
ユキは眼差しを一ミリも緩めず切実に、なにからも逃げることなく、私をその瞳の中に閉じ込める。
「例え君だとしても、俺の気持ちを曲げることはできないよ」