※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


「今回は誕生日に近いし、苺たっぷりのタルトがいいんだけど」


突然、舞香が爪をいじりながらそう言い出した。


「あ、ああ、うん、言っておく!」


やっぱり今回も準備しなきゃいけないのかと気が重くなりつつも、舞香の視線が爪にしか向けられていないのは分かっているけれど笑顔を作る。


「わ~、苺のタルトって私大好物。楽しみ~っ」

「私も楽しみ」


盛り上がるみんなにニコニコしながらも、まるでそこに引き寄せられるように、不意に視線が揺れた。

その先には、席に座るユキがいた。


うまく笑えていない下手くそな笑顔を見られただろうか。


ユキがなにかを言いたそうに口を開きかけて、けれどすぐに私は視線をそらし、みんなの輪の中に戻った。




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