※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
いつも一緒にいるメンバーが、ドア付近の壁際で話しているらしい。
大瀧の歌声にかき消されることなく、その声はクリアに耳へと入ってくる。
「ああいう時ってさ、気を遣わない? 舞香のための会なのに」
「ほんとだよね。それなのにめっちゃ嬉しそうに賞品貰っちゃって。よかったの? 舞香」
まるで背筋に氷を差し込まれたようだ。
頭の芯ががんがん揺れて、うまく息を吸えない。
けれどなによりも私の心に突き刺さったのは。
「んー、いーんじゃない? あの子ケーキ運んできてくれるし」
シャンパンを飲んだような間の後の、舞香の無機質で温度のない声だった。
私にはまったく関心のないような突き放すような、そんな声。
「やっさし~。はのんって、舞香にへこへこして召使いって感じだよね。なんかたまに空回ってる時あるし」