※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


どうして、弱った時に現れるのだろう。

どうして、私はその顔を見てこんなにも安堵しているのだろう。


「はのんちゃん、傘持ってきてないかもと思って」


まるでなんてことないような口ぶりでユキが微笑む。


「それで、待っててくれたの……?」


スクールバックを持っていないことから、一度帰って、それから私の分の傘を持ってまた出てきてくれたのだということが推測された。

多分、学校でのやりとりを聞いて、ここに来たのだろう。


雨が、外気の温度を下げている。

 
この雨の中、ユキは3時間近くずっと待っていたことになる。


「友達もいたし迷惑かなとも思ったんだけど、はのんちゃんが困ってたらいけないから」

「いつ出てくるかも分からないのに、ここで……?」

「その分、はのんちゃんのことを考えてる時間が増えたよ」


身構える隙もなく無償の優しさを容赦なくぶつけられる。

ユキは、優しさを手加減してくれない。


ユキの声は、言葉は、いつだって傘になって降りしきる孤独の雨から私を庇ってくれる。

だからきっと心のガードが脆くなってしまうのだ。

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