※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


眩しすぎて、もういっそ泣きたくなる。

そう思った時にはもうすでに、冷たいだけのものとは違う熱いものが一筋頬を伝っていた。


そして氷が溶けるみたいに、ぽろりと心の声が重力に逆らえずにこぼれ落ちた。


「もっと……」

「はのんちゃん?」

「もっと自分を大切にしてよ……」


自分がどうして泣いているのか分からない。

あるいは、雨かもしれない。


けれど、いつだって私のことばかりを一番に考えるユキのことを思ったら、どうしようもなく胸が苦しいのだ。

この感覚だけは嘘じゃない。


すると、その時。不意に頭の裏に手が回され、強く引き寄せられた。


ふわりと甘い香りが鼻に触れて、抱きしめられていることにようやく気づく。


「濡れちゃう……っ」


びしょびしょの体なんて抱きしめられたら、ユキまで濡れてしまう。


けれど、ユキの腕の力が緩むことはなかった。


「……ありがとう、はのんちゃん。幸せすぎて窒息しそう。俺はこの世に捨てられたと思っていたから」


耳元で絞り出された言葉が心に引っかかり、「え?」と聞き返そうとした時、ユキが体を離した。


目の前にいるユキは、いつもどおりのユキだ。
  
 
「帰ろっか」


ユキの声は、こんなにもうるさい雨の音にもかき消されることなく、私の鼓膜を優しく撫でる。


優しく促されて、下唇を数秒噛みしめたのち頷いた。

――その時だった。

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