※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
「――はのん?」
夜の空気を裂く矢のように聞こえてきた声に、私は背筋が一瞬にして凍りついたことに気づいた。
信じられない気持ちで、消え失せたい衝動に抗いながらそちらを見れば、舞香や成宮たち数人がホテルのエントランスに立っていた。
「なんで……」
「大瀧のワンマンショーから抜け出してきた。っていうか、なんでってこっちの台詞なんだけど。こんな場所でなにしてんの? エンプロイドと」
冷たい眼差しで淡々と問い詰められ、私は頬の表情筋が引きつっていくのを感じていた。
その一瞬の淀みも許さないというような追及の眼差しに、ぎゅんと指先まで筋肉が縮こまる。
なにを言ったらいい?
どうしたら切り抜けられる?
思考が絡み合い、なんの意味もない真っ白な答えになって消えていく。
まるで地面に穴が開いて、奈落の底に落ちていくようだ。
いや、もういっそそうなってしまえばいいのに。