※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
「なにエンプロイドなんかが花宮と肩並べてんだよ」
成宮がひどく鋭い眼差しをユキに向ける。
普段は爽やか男子で通っている成宮の、ユキを見下すようなその眼差しに指先が凍りつく。
「あの、それは、」
弁明の言葉を口にしようと、真っ白な頭のままで唇を開きかけた時。
「違う。俺が勝手に追いかけてるだけで、花宮さんの意思は関係ない」
「え?」
隣から聞こえてきた感情が読み取れないユキの透明な声に、私は思わず声にならない声をあげた。
「そーなの? はのん」
間の延びた声で、まるで最終確認のように舞香が問うてくる。
するとそれを合図にするかのように、いきなりユキが私の肩を掴んできた。
「そうだよね、花宮さん」
「な、」
「――……」
一瞬の間の後で、私はユキのことを思い切り突き飛ばしていた。
ユキが生垣に背を打ちつけ、エンプロイドの腕輪がガシャンとコンクリートに打ちつけられる音が鳴る。
傘が飛び、バチャッと派手な音を立てて水しぶきがあがる。
けれどそんなのお構いなしに、私はユキに向かって声を張りあげた。
「エンプロイドが触らないで!」