※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。


「なにエンプロイドなんかが花宮と肩並べてんだよ」


成宮がひどく鋭い眼差しをユキに向ける。

普段は爽やか男子で通っている成宮の、ユキを見下すようなその眼差しに指先が凍りつく。


「あの、それは、」


弁明の言葉を口にしようと、真っ白な頭のままで唇を開きかけた時。


「違う。俺が勝手に追いかけてるだけで、花宮さんの意思は関係ない」

「え?」


隣から聞こえてきた感情が読み取れないユキの透明な声に、私は思わず声にならない声をあげた。


「そーなの? はのん」


間の延びた声で、まるで最終確認のように舞香が問うてくる。


するとそれを合図にするかのように、いきなりユキが私の肩を掴んできた。


「そうだよね、花宮さん」

「な、」

「――……」


一瞬の間の後で、私はユキのことを思い切り突き飛ばしていた。


ユキが生垣に背を打ちつけ、エンプロイドの腕輪がガシャンとコンクリートに打ちつけられる音が鳴る。

傘が飛び、バチャッと派手な音を立てて水しぶきがあがる。


けれどそんなのお構いなしに、私はユキに向かって声を張りあげた。


「エンプロイドが触らないで!」

< 89 / 185 >

この作品をシェア

pagetop