※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
これ以上嘘を重ねても無駄だと考えた俺は観念して、本当のことを打ち明ける。
「はのんちゃんのこと待たせるわけには行かないし、部屋にいてもそわそわしちゃうから。
それに、はのんちゃんを待ってる時間、俺は好きなんだ」
「え?」
「今日はどんなこと話そうかとか、どんな格好で来るのかなとか、はのんちゃんのことを考えていられるから、一秒一秒がすごく愛おしいっていうか」
なにもやることがなく、ぼんやりしているだけの時間は、どこが終点なのか分からない行き先不明の電車に揺られているような気持ちになる。
だけどそんなまっさらでしかなかった俺の時間が、はのんちゃんで色づく。
それってすごく幸せなことだから。
すると、はのんちゃんは不意を突かれたように、くるんとカーブする睫毛を伏せた。
「もう……朝からカロリー高いのよ。……行こ」
顔をさらに赤くしたはのんちゃんが歩きだした。