僕の庭
しかし、そんな日はいつまで待っても来はしなかった。


最初に下の兄、次に父、と次々と訃報が舞い込んだ。

遺体を見るまでは信じるものか、と母と二人で祈るようにして過ごしていたが、下の兄の遺骨が、戻ってきた。


小さな箱に、一握りの白い石にも似た遺骨と、愛用の眼鏡。

気丈に振る舞っていた母も、箱の中の眼鏡、ひしゃげて形を成していなかったが、それを手にとると声を殺して泣き崩れた。


僕はその丸まった背中を何度も何度も撫でながら、涙をこらえた。

僕まで泣けない、まだ父と上の兄がいる。二人が帰ってくるまでは。
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