僕の庭
足繁く店に通う僕は、気付けば常連のようになっていた。

人の少ない時間帯に来るというのも、覚えられやすい要因だったのかもしれない。
僕が店に入ると、店の大将や女将さんがにこやかに挨拶をしてくれるようになった。


「仕事、忙しそうね」


「ああ、忙しいくらいが丁度いいさ」


その日は僕は休みで、遅れた昼食をとりに定食屋に来ていた。ちょうど花保理の休憩時間と重なっており、僕たちは向かい合って食事をとっていた。


裏口から女将さんが娘さんと外出する姿を見つけた僕は、そう言えば、と彼女に聞いた。


「君はこの店の人たちとは親戚か何かなのかい?」


女将さんたちと花保理はとても仲が良さそうだったし、彼女は裏で同じ敷地に住んでいる事でもあるし、と思ったからだ。

花保理はさらりと、違うわよと言った。


「あたし、孤児だもん」


「え?」


「ゴミ捨て場にね、捨てられてたんですって。引き取り手がいなくて、お寺に連れてかれたみたいなのね。
だから親代わりは住職様ってことになるかしら」


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