僕の庭
夕方までなら、と許可をもらい、僕は花保理と街中を並んで歩いた。


「すまない。仕事の邪魔までしてしまったな」


「構わないわ。旦那さんに、たまには休んでもいいぞって言われていたところだったし」


「そうか……」


僕は花保理を連れ出したものの、何をどうしたものかと思案に暮れていた。
横を歩く花保理をちらりと窺うと、彼女はただ僕の進むがままに付いてきている。


「あー……、川縁まで、行ってみようか」


「ええ」


少し距離のある場所を言い、僕はそこまでの道のりで話をしようと決めた。


「あの、上手くまとまらないんだが」


「何?」


「うん、君に、『僕』の話を聞いて欲しくて」


僕はからからに乾いた唇を舐めて湿らせて、小さく息を吐いた。
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