僕の庭
「僕には両親と、二人の兄がいたんだ……」


僕はゆっくり、ゆっくりと話した。
父があの日語ったこと、兄二人を失ったこと、小さな箱の重み、母の涙、

死を望んだあの時。
母の死。

そして花保理と出会った時の僕。


「君からして見たら、僕は情けない甘えた男だろうね?
こんな話を聞かせるなんて、女々しいとも思うかな。

ただ……、

これは、僕の我が儘、勝手な自己満足なのかもしれないが、僕は君にこの話を聞いてもらいたかった。
はは、おかしいだろう?
僕は君に懺悔するような気持ちなんだ。両親に、兄たちに、こんな情けない僕を許して欲しくて、でも理解して欲しくて、でも彼らはもういなくて。
それを君に求めている気がする。

意味が分からないな、すまない」


川縁はまだ風が肌寒くて、春はまだ遠く遥か先のようだった。
僕たちは葉が落ちた太い木の陰に並んで座っていた。
言葉を選びながらたどたどしく話していると、結局川縁についても話は終わりをみせなかった。

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