僕の庭
彼女にもう会わす顔がない。
僕は、定食屋へと通うのを止めた。

休みは家にこもり、ただ時が過ぎるのを待つような、退屈な日々。
救いは、絵を描く時間だった。

少ない給金から少しの画材を買い、家の縁側から見える風景を描く。
冬の庭は手入れも何もしていない状態で、でも僕は殺風景なそれをただ時間つぶしのように描いた。
絵を描く時間は何も考えずにいられた。
目の前の真白な紙に向かってさえいればいいのだから。


しかしやはり飽きはくるもので、面白みのない庭は何枚も描いたところで筆が進まなくなってしまった。

つまらない庭、か。
僕は抱えていたスケッチブックを脇に置いてくすりと笑った。


この庭はまるで僕自身みたいに感じられて。
面白くも、魅力もない庭。
人を引きつけるものなどない庭。

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