僕の庭
ぼんやりと空を眺めていた筈なのに、ふ、と頭に浮かぶのは彼女の笑顔で、僕は溜め息をつく。

もうあれから幾日も経ったのに、未練がましいのだろうか。
早く、忘れたほうがいいのだろうが。


だが気付けば、スケッチブックに彼女の笑顔を写しとろうとしていた。
彼女の優しい顔を思い出しながら鉛筆を走らせるが、思うままにゆかずに書き直しを繰り返す。


「さて、困ったな」


独りごちて、スケッチブックの中の、彼女に少しだけ似た女性に溜め息をつく。
脳裏にはこれほどまでに鮮やかに蘇るのに、形にするのはこんなに難しいものか。

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