僕の庭
「こんにちは。絵描きさんなの?」


急に声をかけられて、顔をあげると垣根の向こうに花保理の姿があった。


「な、何故……?」


「もう、急に店に来なくなったから心配したわ。ずいぶん探したんだから」


花保理はうろたえた僕にお構いなしに、めっと渋い顔を作って言った。


「あ、いや、すまない。しかし……」


「お邪魔するわね?」


彼女は門をくぐり、庭を通って縁側に現れた。

僕の横にとすん、と座る。


「すっごく、探したんだから」


「……ああ」


僕はこの状況が理解できずにいた。

何故? どうして?

そんな言葉が頭をただぐるぐると回っていて。

花保理はそんな僕の心を知らないだろう、貧相な庭を興味深そうに眺めていた。


「ちゃんとお手入れしないとダメよ? せっかくのお庭が勿体無い」


「あ、ああ。いや、庭なんかよりだな……」


僕はスケッチブックを背中に押し隠しながら、言葉を紡ごうとした。

ここへ現れた彼女の真意は何なのだろうか。

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