僕の庭
「ご飯、ちゃんと食べてる? ほら、今日は旦那さんがお弁当作ってくれたのよ」


花保理は僕の前に風呂敷包みを掲げ、僕は口の中でもごもごと礼を言ってそれを受け取った。

ただ、様子のおかしな常連客を気遣っての事だろうか。
それともいつかのように、優しさゆえに見捨てられなかったのだろうか。

包みを膝にのせて彼女を窺うと、僕と目があった彼女はにこ、と笑った。

頭は益々混乱をみせ、僕は花保理から視線を逸らした。


「……その、気遣いは、いらない」


絞り出すように発した言葉は思ったよりも弱々しかった。


「え?」


「僕の事は気にしなくていいんだ。勝手に言った事なんだから忘れて欲しい。
これ、ありがとう。でも、もう結構だから。

ここにも来ないでいい」


がた、と花保理が立ち返った。
そのあまりの勢いに、僕は顔を上げて彼女を見上げた。

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