僕の庭
生活がゆっくりと落ち着きを見せ始めた頃。
気候は暖かくなっていて、遠くの山の桜が色づき始めていた。


「そろそろ庭をちゃんと手入れしたいわねぇ」


出勤前、共に朝食をとっていると、花保理が溜め息まじりに言った。


「庭を?」


「ええ。花を植えたりしたいじゃない?」


「ふむ。畑にしたらどうだ? 少しは生活の足しになるし」


途端に、花保理が眉根を寄せた。


「うーん、実用的なんだけど、あたしとしては季節毎の花がいいなあ」


「じゃあ花にしようか。今度の休みに花の種を買いにいこう」


花保理の顔がぱっと輝いた。


「ええ! わあ、嬉しいなあ。あたし、楽しみにしてる」


「そうか。じゃ、そうしよう。じゃあ行ってくる、ごちそうさま」


「はい、行ってらっしゃい」


いつものようにバイクに乗り、玄関先で手を振る彼女に見送られて家を出た。


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