僕の庭
その日は昼前から天気が崩れ、ぬかるんだ道に苦労しながらバイクを走らせていた。

午前中の仕事を何とか終えた時には昼をとうに過ぎていた。
遅い昼休みを取ろうと会社に戻ると、社長が慌てふためいて駆け寄ってきた。



「奥さんが! 花保理さんが亡くなった!」



社長の顔は蒼白で、それが嘘や狂言ではない事が分かった。


「隣町の花巻病院だ! 早く行け!」


言葉を最後まで聞かずにバイクを走らせた。



嘘。
だって彼女は僕を見送って。
次の休みは花の種を買いにいくと。

嘘。  嘘だ。

彼女が、花保理が。


嘘だ。






嘘……。






花保理





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