僕の庭
目を覚ますと、病院のベッドの上だった。


「浜田くん! 起きたのね!?」


覗き込んだ顔は、隣の家のおばさんだった。泣きはらしたような目は真っ赤だった。


「ここ、は……?」


どうにか発した声はからからに乾いていた。


「病院よ。浜田くん、バイクで事故にあって、今までずっと意識が戻らなかったのよ」


涙を流しながら言うおばさんを安心させるために、微かに唇の端をあげて笑ってみせてから、僕は思考を巡らせた。


事故?
僕は何をしていたのだろう?

僕は何かに追われるようにバイクを走らせていた筈で。
それは悪夢だったようで。


悪夢。

花保理がいなくなる悪夢。



「おばさんっ!? 花保理はっ!?」



身を起こそうとして、全身を襲う痛みに身をよじる。
痛みで涙がにじみ、その視界の端に、倍の大きさになっている右足が見えた。


「かほ、花保理は……?」


おばさんが泣き崩れた。






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