僕の庭
「亡くなった、わ。あなたが事故にあった、その日に」


おばさんの言葉を、僕は何回も呟いた。

亡くなった?
花保理が?


「あの日から5日が経ってるわ。あなたも危なかったのよ、本当に無事でよかった」


今は体を治すことを考えましょう、ね?
と彼女は涙で濡れた顔で僕に言った。
僕はそれをどこか遠いところ、膜がかかったような薄らぼんやりした映像のようなものにしか見えなかった。

おばさんは何を言っているんだ?
花保理が僕を置いていなくなった?
有り得ない。
僕らはかけがえのない、ようやく出会えた家族なんだ。
全てはこれからで、庭には花の種を植えるはずで。

僕は衝動的にベッドから飛び降りた。
しかし右足が全く意志を受け付けず、僕は床に這いつくばるようなかたちになった。


「浜田くん! 誰か、誰か!」


おばさんの声に、医者や看護婦が飛び込んできた。這うようにして部屋を出ようとする僕を、みんなで留めようとする。

僕は煩わしい彼らに思いつく限りの怒声を浴びせ、思うように動かない体で暴れた。

< 155 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop