僕の庭
暴れる僕に、医者は何か薬を投与したらしい。
気付けば再びベッドに横たわっていた。


今度僕を覗き込んだのは、隣のおばさんではなく看護婦だった。


「……これは夢の続きですか?」


発した声は抑揚のない乾いたものだった。
看護婦は僕の様子に違和感を感じたのか、すぐさま医者を呼んできた。
いかめしい顔をした医者は、僕に落ち着くように言うと、やけにゆっくりと話し始めた。


僕は花保理のいる病院に向かう途中、バイクで転倒して怪我を負ったこと。
5日も意識不明だったこと。
大きく負傷した右足は、回復しても元のようには歩けず、これからは松葉杖を必要とすること。

そして、花保理は僕が事故にあったその日に、くも膜下出血で亡くなったこと。


医者はそれをただ聞いている僕を訝しんだのか、ここまでの話はお分かりでしょうか?ととやんわりと尋ねた。

僕はそれに頷き、医者はほっとしたような表情を浮かべ、安静にしていて下さいと言い置いて去った。


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