僕の庭
退院した日、僕は慣れない松葉杖を操りながら、急いで我が家へ向かった。


出迎えてくれたのは、小さな白い祭壇に置かれた箱だった。
温かな味噌汁の香りに充ちていたはずの部屋は、線香の煙に変わっていて。


花保理?
花保理?

僕は狭い家を、声を上げて探し回った。


いない。

いない。

花保理?


のろのろと祭壇の前に行き、箱に手をのばした。

あまりにも軽いそれは、僕の腕に残る花保理の重さと全く違っていて、僕はこれが花保理だとは思えなかった。
花保理の訳がない。


「……そうだ、定食屋」


彼女はあそこで待っているかもしれない。

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