僕の庭
翌日。
昨夜から風が強い。

桜の花は確実にその短い命を鮮やかに散らせている。
僕は朝早くからキャンバスに向かい、一筆一筆完成に近付けていた。
残すは、佳穂の艶やかな黒髪部分のみだ。
僕は筆を置き、びわと共に佳穂の来訪を待った。


風が少しおさまりかけた昼下がり、佳穂は桜吹雪の中から現れた。
庭を舞う花びらを掴もうとしているのか、空に向かってしきりに手を振っている。
僕と視線が合うと、照れたように笑った。


「こんにちは。花びらがすごく綺麗ね。
絵ができたら、お花見しましょうよ」


僕はできるだけにっこりと笑って頷いた。

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